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『愛なき世界』三浦しをん 著 [読書録]

三浦しをん さんの『愛なき世界』を読みました。
久しぶりに小説をよみましたね

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東大(※作中ではT大とあるけど東大ですね)・赤門の近くの料理店で大将に弟子入りして料理の道を進んでいる若者・藤丸と彼が好意を寄せ日々植物の研究に励んでいる東大研究室の大学院の女性・本村さんとの恋物語だと思って読み始めましたが・・・
タイトルの「愛なき世界」とは植物の世界のことを指します。
人間をはじめとする動物とは違い愛という感情を持つことなく子孫を残していく植物の世界のことを研究を通じて理解したいという彼女は料理店の若者の告白に対してきっぱりと断ってしまいます。
”恋のライバルが人類だけとは限らない--!?”とは出版元の中央公論新社による解説の一節です。(こちら

藤丸は振られながらも彼女や研究室の人たちとの交流を通じて次第に彼自身も植物の世界の不思議に興味を惹かれていきます。植物への興味が増すにつれて更に彼女への思いは募る一方です。
果たして二度目の告白の行方は・・・といった説明でどれだけの人がこの本を手に取ってくれるかは全く分かりませんが400ページちょっとのボリュームでもあっという間に読み切っちゃいました。(読書感想文は苦手でした[あせあせ(飛び散る汗)]

三浦しをんさんの文体は自分とは相性がいいらしく彼女の作品を読み始めるとあっという間に読み切っちゃいます。

作品の中で院生の彼女が研究対象としている植物がシロイヌナズナというものでした。
ごく一般的に道路わきの空き地なんかにも咲いている植物だそうできっと私も見たことがある植物だと思います。
ネットでシロイヌナズナの画像を調べて近くの草むらを探してみましたがなんだか似たような葉っぱばかりで私には見つけることが出ませんでした[ふらふら]

このシロイヌナズナはこれまでの研究によってゲノム全体の解明がすべて完了した世界初の植物だそうで様々な分野で研究対象となるような植物のモデル生物なのだそうです。
発芽から2か月ほどで受粉して種ができるという短いスパンで育てられるのも研究対象としてはうってつけだそうです。
変異種の交配を繰り返して意図した変異を持った種を作り出す研究の過程で登場するのが今話題のPCRで作品中でもPCRの仕組みや検査方法の描写があります。
文系人間の私には文章だけでPCRの仕組みや使い方を表現されてもイマイチピンとこないのですが
執筆時にはPCRがこんなにメジャーなワードになるとは作者も思ってはいなかったはずですね。
植物学の研究室が扱う研究テーマは基礎研究分野に属するものなので今すぐお金になるという華やかな研究ではない地味で地道な研究なのですが基礎研究こそ大切にしないといけない学問領域だとどこかの偉い先生がおっしゃっていたことを思い出しました。

”好きだからもっと知りたい”というのは研究も恋愛も同じということなのかも・・・
愛なき世界

愛なき世界

  • 作者: 三浦しをん
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2018/10/26
  • メディア: Kindle版


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