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第二次大戦・北方の戦史をしりたい [読書録]

本当は8月中に読破したかったのですが・・・
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『陸軍中将 樋口季一郎の遺訓』(勉誠出版)
           樋口隆一 著


樋口季一郎という人物をどれほどの人が知っているのかなぁ?
まぁ自分もつい最近知ったのですけど・・
本のタイトルの副題にあるように”ユダヤ難民と北海道を救った将軍”と呼ばれています。

”ユダヤ難民を救った”・・・
第二次大戦中にユダヤ難民を救った日本人といえば”命のビザ”で世界的にも有名になった外交官・杉原千畝さんがすぐに思い浮かぶと思います。
しかし陸軍の樋口季一郎中将も戦時中に日本の同盟国であるドイツからの迫害を逃れて満州国境にやって来た多くのユダヤ難民に対し満州国への入国を上層部に認めさ第三国への亡命のための手助けをしました。
軍人という立場では同盟国ドイツとの関係もあり難しい判断だったはずですが彼のユダヤ民族への博愛精神が彼を突き動かしたのです。
日本人よりもユダヤ人の間では有名な存在のようです。
(この本を読むと当時の日本人の間でもユダヤ難民に対する理解と保護の意識をもった人はかなりいたようです)

”北海道を救った”・・・
陸軍で北海道を含む北部(樺太・千島)の軍事的責任者であった樋口は有名なキスカ島撤退作戦の陸軍側の指揮官でもあり日本の敗戦日以降も続くソビエトの日本の北方地域進攻に対し現地居留民の北海道への避難のため迫りくるソビエト軍に対し残存兵力での抗戦を指揮しました。
終戦の日(8月15日)以降もこうした戦争状態が続いていたという事実は意外と知られていないようです。
ソビエトの指導者・スターリンはアメリカに対して北海道の半分以北、あるいは東北以北と首都東京の分割統治までをアメリカに要求していて既成事実を作るため8月15日以降も北方の日本の
領土に侵攻を続けました。
この攻防で多くの兵士、民間人が命を落とし捕虜となった兵士には以後辛いシベリア抑留が待っていました。
結局は樋口らの徹底抗戦に遭いソビエト軍の北海道上陸は果たせず結果的に北海道は戦後も日本の領土として守られました。

この本を書いた樋口隆一氏は私の母校・明治学院大の教授職に就かれている方で樋口季一郎のお孫さんです。
樋口季一郎についての文献は数々出版されていて本人の書き残した手記も書籍化されていますが今回新たに発見された手記も載せてお孫さんである著者が彼の生涯をまとめた1冊を書き上げました。(樋口季一郎に関する書籍で最新でほぼ完璧な一冊になっています)

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県立図書館のオンライン貸し出しサービスでこの本を借りたのでこれほどボリュームのあるものとは思いませんでした。(栞の挟んであるページまでしか読み切れていません)
とりあえず樋口季一郎の生涯をまとめた章は読み終えましたが続く季一郎が書き残した手記の部分はどうやら貸出期限の再々延長でも読み切れるか怪しくなってきました。
戦後に書き残された手記といえども軍人だった人が書いた文体なので自分にはちょっと読みにくい(時間がかかる)ので一旦返却して後日借り直そうか思案中です。
北方領土関係の当事者としての回顧録(手記)や所信が書かれている章もあるようなのでそこまでは読み終えたいのですが・・
陸軍中将 樋口季一郎の遺訓ーユダヤ難民と北海道を救った将軍

陸軍中将 樋口季一郎の遺訓ーユダヤ難民と北海道を救った将軍

  • 作者: 樋口隆一
  • 出版社/メーカー: 勉誠出版
  • 発売日: 2020/04/02
  • メディア: 単行本


そうそう私が樋口季一郎を知るきっかけになったのが北太平洋アリューシャン島しょの攻防戦(アッツ島玉砕・キスカ島救出作戦)です。

特にキスカ島からの日本軍の奇跡の撤退作戦については書籍でじっくり読みたいと思い古本ですがこちらの書籍を入手。

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日本海軍と陸軍の共同作戦で太平洋戦争史上他に例を見ない大成功を挙げたのがキスカ撤退作戦です。

ガダルカナル島をはじめとする南方戦線に比べて今の日本人にあまり知られていない北方の攻防戦のなかで日本軍が死守するアッツ・キスカの両島での米軍との戦いで全員玉砕した悲劇のアッツ島(”玉砕”というフレーズが初めて使われた悲劇)と全員の撤退作戦が完璧になされたキスカ島(米軍をもって”パーフェクト”と言わしめた作戦)。

キスカの奇跡の撤退作戦を海軍側の指揮官・木村昌福提督の伝記が本書です。
陸軍側の視点では前出の樋口季一郎の手記に詳細が書かれている模様。
この2冊を読めば奇跡の作戦の詳細が分かるかも・・と、こんな風にえらそうに書いたけどまだ未読[あせあせ(飛び散る汗)](ごめんんさい)

キスカ撤退の指揮者 (光人社NF文庫)

キスカ撤退の指揮者 (光人社NF文庫)

  • 作者: 泰浩, 将口
  • 出版社/メーカー: 潮書房光人新社
  • 発売日: 2019/06/24
  • メディア: 文庫
文庫版とはいえ細かい字で読むのに苦戦しそうなので
書店でタイミングよく雑誌『歴史群像』でキスカ島撤退作戦が特集されていたので買い求めました。

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キスカ島の特集の他に戦国大名の細川藤孝の記事も読めるので買ってよかった。
大河ドラマ『麒麟がくる』では俳優の眞島秀和さんが演じていますね。
彼は戦国の世を生き抜いて江戸時代に肥後藩の細川家の租となった人物。

更に私がここ数年の間で『歴史群像』を書店で新品で買ったのは決まってこのボードゲームが付録になった号です。

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最近はボードゲームが再び人気なんだとか・・
高校~大学のころはこうした趣味レーションゲーム(ウォーゲーム)が流行った時期でした。(のちにPCゲームでのコンピュータ対戦型ゲームにとってかわられてしまった)
ルールブックを読み理解したうえで盤(紙製)上の地形を再現したMAP上を敵味方に分かれてコマを動かしさいころの目で勝敗を決めるというアナログの極みのようなゲームですが実際にテーマとなっている戦場(作戦)についての予備知識がないと楽しめません。
私も歴史群像の付録のシュミレーションゲームを3つ持っていますがなかなか対戦相手が周囲に居ないので実際にプレイしたことはないです。
今回の付録ゲームのテーマはノルマンディです。



歴史群像 2020年8月号 [雑誌]

歴史群像 2020年8月号 [雑誌]

  • 出版社/メーカー: ワン・パブリッシング
  • 発売日: 2020/07/06
  • メディア: Kindle版


話が脱線しましたが太平洋戦争での北方での戦いというのは米軍相手の戦闘以外では相手がソビエト軍ということで共産主義の秘密のベールによって当時の戦況・史実というものが不透明なのですが”返せ(還れ)北方領土”と声高に言い続けても一向に埒が明かないのでもう少し我々も歴史的背景を勉強してから考えてみた方が良いのだと思います。
安倍首相も当初は北方領土問題の解決に道筋を付けたいと意気込みを見せていましたが・・・


どうも自分は戦中戦前の樺太とか極東ロシアの話が無性に好きなようです。
尼港事件とか・・・知っている人少なさそう[たらーっ(汗)]


駄文・長文失礼しました。

タグ:キスカ
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我流麺童

当時の日本は、8/14にポツダム宣言受諾を連合国側に通告し(日本軍は壊滅)、8/15に天皇から国民に対して戦争集結が放送された。しかし、旧ソ連軍は9/2の降伏文書署名まで旧満州や北方領土で侵略を継続したことを忘れてはいけない。
by 我流麺童 (2020-09-03 18:13) 

八犬伝

私も、最近知りました。
杉原さんだけでなく、満州経由でユダヤ人を助けたということ。
須賀しのぶさんの小説の中で知りえたことですが。
by 八犬伝 (2020-09-03 20:40) 

hanamura

戦史は、その研究というか、分析というか、考えるとうか、机上分析は好きなのですが、「それを発表(プレゼンティション)せよ!」という立場にされたら、突然、真逆に、イヤですねぇ。(こんな自分(ズブン)が恥ずかしい。)
by hanamura (2020-09-03 21:16) 

hirometai

青い森のヨッチン様
こんばんは
樋口季一郎氏も木村昌福提督も知りませんでした。
シベリヤから引き揚げた義父が語りたくなかった過去でしたが、話すときは、辛そうでした。
二度と起きてほしくないですね。

by hirometai (2020-09-04 02:17) 

ぽちの輔

千畝さん以外にもユダヤ人を救った人が居るという話は最近聞きました。
この人の事だったのかな?^^;
by ぽちの輔 (2020-09-04 07:19) 

ロートレー

私の父も真岡で捕虜になり、シベリヤで過酷な強制労働の抑留生活を強いられました。
終戦後も抗戦した部隊があったのは知りませんでした。
by ロートレー (2020-09-04 08:29) 

silencer169

樋口季一郎の名前と功績がもっと知れ渡れば思いますねえ。大昔にアンビリバボーで映像化されていたような気がしますが、それくらいですねえ。
by silencer169 (2020-09-05 10:20) 

ぽ村

お邪魔してくださいましてドモヽ(´Д` ) ( ´Д`)ノドモ

歴史群像ヲレも好きですー…滅多に買えないけど;(金がない&近所の書店が仕入れない)

戦争は話すとキリがないんですけど、実はボドゲの類も好きなんですよー
シヴィライゼーションのボドゲ版を遊びたいけど、人数揃わないのでいつもTVゲーム版で我慢してますw
by ぽ村 (2020-09-05 23:05) 

青い森のヨッチン

我流麺童さん
樋口中将は陸軍きってのロシア通だったのでソ連がすぐに停戦をするとは考えずに残存兵力で徹底抗戦で一人でも多くの日本人を北海道へ逃がそうと奮闘されたようです。
by 青い森のヨッチン (2020-09-06 23:19) 

青い森のヨッチン

八犬伝さん
相良俊輔著『流氷の海 ある軍司令官の決断』という小説にも樋口季一郎について書かれているようです。
by 青い森のヨッチン (2020-09-06 23:23) 

青い森のヨッチン

hanamuraさん
戦後長い年月が経過した今でも新事実が発見されていますね
戦史も古い知識だけでは迂闊に論じたりできないですね。
by 青い森のヨッチン (2020-09-06 23:31) 

青い森のヨッチン

hirometaiさん
シベリア抑留を経験された方々は本当につらい経験だったと思います。
by 青い森のヨッチン (2020-09-06 23:38) 

青い森のヨッチン

ぽちの輔さん
当時日本側にもユダヤ人に対しての同情の念を寄せる人々がかなりいたようです。
by 青い森のヨッチン (2020-09-06 23:43) 

青い森のヨッチン

ロートレーさん
当ブログにコメントを寄せていただいた方の中でお二人もお身内にも抑留経験をされた方がいらっしゃったということに少し驚いています。
by 青い森のヨッチン (2020-09-06 23:45) 

青い森のヨッチン

silencer169さん
色々な媒体で彼の功績が知られるといいと思います。
by 青い森のヨッチン (2020-09-06 23:47) 

青い森のヨッチン

ぽ村さん
ボードゲームは対戦相手確保が最大のネックですね、加えてウォーゲーム(懐かしい言葉)の場合、戦史も多少知っていないと・・
by 青い森のヨッチン (2020-09-06 23:48) 

yokomi

 アッツ島玉砕は知っていましたが、キスカ島救出作戦は知りませんでした。我が家の爺がシベリヤで強制労働させられたり、伯父が亡くなったりしたので、興味ある分野です。私も読んでみたいです。
by yokomi (2020-09-08 00:45) 

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