2019年9月22日(日)に八戸市の八太郎岸壁でJAMSTEC(海洋研究開発機構)の有人潜水調査船「しんかい6500」とその母艦である「よこすか」の一般公開がありました。

私の子供のころTBSで「日本沈没」という連続ドラマが放送され劇場版や小松左京の原作とともに空前のブームとなりました。
劇中では「わだつみ」という有人潜水調査船にパイロット(操縦者)と地球物理学者が乗り込み日本海溝で日本列島に忍び寄る破壊的兆候を目の当たりにするのですがこの「わだつみ」が子供のころに大好きになり毎回放送を楽しみにしていました。
潜水シーンは特撮でしたのでウルトラマンなんかと同じ感覚で見ていたのかも・・・
それ以来、しんかい2000ーしんかい6500が活躍するTVのドキュメンタリー番組なんかも欠かさずに観ています。
最近ではWOWOW制作のTVドラマにも登場。



連続ドラマW 海に降る Blu-ray BOX



  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン

  • メディア: Blu-ray





主演は「あまちゃん」でブレーク直後の有村架純。
女性初のしんかい6500のパイロット役です。



海に降る



  • 作者: 朱野 帰子

  • 出版社/メーカー: 幻冬舎

  • 発売日: 2012/01/13

  • メディア: 単行本





▲原作はこちらです。私も読みました。コミカライズやオーディオドラマにもなっているようです。

ということで今回の一般公開は心待ち待ちにしていました。

深海潜水調査船支援母船「よこすか」(4,439t)


この日の一般公開は実は翌日の23日(祝)に予定されていたものを台風17号の接近にともない一日前倒しで実施されました。当初の予定通りだったら「しんかい6500」を見る機会はまた遠くなってしまっていただけにナイスな判断で助かりました。
船首側から見ても特に普通の船っぽくしかみえませんね。


船名の「よこすか」はJAMSTECの本部がある横須賀から由来しているものと思われます。
#59128;JAMSTECのHPへ(こちら



一般公開が行われた八戸港の八太郎岸壁は以前、南極観測船「しらせ」(2代目)の一般公開が行われたのと同じ岸壁でした。
9時30分からの一般公開ということで自宅からクルマで1時間半ほどかけて岸壁に到着。
40分ほど前に乗船待ちの列に並んでほどなく乗船できました。
自衛隊艦籍の艦船公開とは違って物販のテントもなく少々寂しい感じ。

艦橋左舷より岸壁を見下ろしたところ。
駐車スペースもだいぶ埋まってきてまだまだ乗船口に向かう人の群れは絶えません。

操舵関係の機器類。

記念スタンプも押させてもらいました。



船内会議室の壁面を飾る日本画。
他に研究者の居室(寝室)などの公開もありました。


はっきりいって早く「しんかい6500」に会いたいという気持ちを押さえながら館内を見学しているとやがて視界の先に「しんかい6500」が姿を現しました。


こちらがしんかい6500の格納庫。
しんかい6500は全長9m、幅2m、高さ3mあるそうでこちらの格納庫内で整備作業まで行われるそうです。
海自の一般的な護衛艦のヘリ格納庫より大きいような気がします。
護衛艦の一般見学会では格納庫にヘリが収容されていることはないので広く感じますがしんかい6500を収容してもかなりの広さと余裕を感じます。
高さと奥行きが「よこすか」の方が大きいかなぁ


格納庫内のしんかい6500はこのような一般公開用にスケルトン仕様でした。


主蓄電池はリチウムイオン電池に換装されて小型軽量化になっています。
先日発表になたノーベル化学賞の吉野彰先生らの研究成果はこんなところでも貢献されています。





船体を覆う外殻パネルですがこうした切り欠きもあり内部は部品や配管がむき出しになっています。
スタッフの方の話だと外殻パネルの中には海水も流入していてパネル自体の機密性はないとのことでしたその代わり操縦者や研究者3名が乗り込む耐圧穀(たいあつこく)は強烈な水圧に耐えられるような頑丈な構造(真球に近い形状)になっています。



しんかい6500の正面。
ほぼ真球型の耐圧穀を包み込むように曲面構成された外殻パネルで覆われています。
真ん中の丸窓の耐圧穀からの覗き穴でその周りにテレビカメラやデジカメ、可動式投光器などが配置されています。




マニュピュレータ(ロボットアーム)とサンプルバスケット。
海底で資料を採取してサンプルバスケットに載せた状態で浮上します。



マニュピュレータの取付部周辺は結構複雑な構造でした。




ハセガワ 1/72 有人潜水調査船 しんかい6500 推進機改造型 2012 プラモデル SW03



  • 出版社/メーカー: ハセガワ

  • メディア: おもちゃ&ホビー





しんかい6500はハセガワからキットが発売されていて私も持っています(1/72スケール)
こちらのキットのサンプルバスケットは一体成型パーツなのでバスケットの網目の再現が無いのでディテールアップポイントとして網目を再現しようと実物を見たかったのですが結構細かい網目なので1/72スケールだとどのような素材を使えばよいのか思案中です。
同時にマニュピュレータの油圧ホースの再現もセットで考えないと・・・

現在のしんかい6500は1989年の完成時の姿と大きく外観上の変更点があります。


船尾にある推進器を1基だけだった旋回式大型から船尾両側に1基ずつ中型の固定式に変えています。
2006年公開の映画「日本沈没」にはしんかい6500の改造前の姿で登場しています。


こちらが改造後の推進器です。改造前は大型のものが1基だけ船尾に”金魚の尾ひれ”のようについていました。

推進器改造前の姿(ハセガワのキットより)左右に可動⒨ほぼ真横まで動かすことができたようです。

推進器の上の船体に空いた丸い穴は改造後に追加されて水平スラスターです。


水平スラスターは前方に1組(左右)、改造後に追加された後方に1組(左右)さらに垂直スラスターが機体側面に左右1組装備されて姿勢制御・運動性能が格段にアップしたそうです。
水平スラスターは最近の漁船にも装備される傾向が増えていて岸壁への離岸接岸等の横移動が容易になりました。
私が手伝いに行っているホタテ養殖船も新造時に新規に装備しました。



これは多分、水流の方向や強さのセンサーかな?



しんかい6500の船尾側。
格納庫の天井が高いです。



船尾の外殻パネルカバーが外されていました。
速度検出器とかかれたセンサーがむき出しになっていますがこの速度検出器はDVLと呼ばれる対地速度計です。
2017年からの改修時にしんかい6500の操作系が大幅に見直されてGPSの衛星信号を受信できない深海においてもしんかい6500自身の移動方向・移動速度を計測してマップ上に現在位置(自律測位)を表示できる「Shinkai Track」というナビが装備されました。
DVLはセンサーなので水流にむき出しになっていないと意味がなさそうなので現在の運用ではこの船尾の外殻パネルカバーは外しての潜航しているのかも?(現在JAMSTECにメールで問い合わせ中)


船尾底部の様子。なかなか見ることがない部分です。
この先、船体中央の底にはバラストが積んであるはずです。


「よこすか」の後部甲板。
「よこすか」は「しんかい6500」の運用母船なのでここは「しんかい6500」を海面に降ろしたり、海面から引き揚げたりするA型クレーンがあります。


約26トンある「しんかい6500」を持ち上げます。

クレーンの船体には着水揚収装置。


※JAMSTECのサイトよりお借りした画像。「よこすか」からの陸揚げ風景。



格納庫の奥にある巻き上げ機(ウインチ)。A型クレーンと連動して「しんかい6500」の引き上げや引き降ろしにつかうのかも?



格納庫内では深海調査で採取した鉱石類の展示もありました。



1時間ほどの見学を終えて岸壁に降りたところまだまだ乗船する人の長い列ができていました。

下船時に記念品として「よこすか」のピンバッジを貰うことができました。
ちょっと地味ですが貴重な感じ。
船内でしんかい6500グッズやJAMSTECの関連グッズを買えるものだとばかり思っていたのに何も販売されていなかったのでよいお土産になりました。



振り返って「よこすか」の後部甲板方を見ると青いA型クレーンの巨大さがよく見てとれました。



今回の一般公開は八戸市の市制施行90周年の記念事業の一環だったようです。

私の持っているハセガワの「しんかい6500」のキットです(1/72スケール)

こちらは推進器改造前のキット。
当初はこちらを改造して推進器改造後の姿にしようと仮組をして改造案を練っていたら・・・・


ほどなく推進器改造後のキットも発売されました。
映画「日本沈没」に登場した「わだつみ6500」を再現するには推進器改造前のキットが必須です。