5月26日(日)は廃線となった十和田観光電鉄の旧七百(しちひゃく)駅で有志の方々による一般公開が行われました。


十和田観光電鉄(とうてつ)はJR東北本線(現:青い森鉄道)の三沢駅から十和田市中心部の十和田市駅までの14.7kmを走っていましたが2012年3月末に廃止となってしまいました。




私が青森に引っ越してきてからも10年ほど運行していたのですが残念ながら一度も乗車する機会がありませんでした。(私の住む町からは三沢も十和田市もどちらもマイカーで出かけることが”ほぼ一択”)


でも一度だけクルマで十和田市内を走っている際に跨線橋から走行中のとうてつ電車を見かけたことがあります。

ここ七百駅には変電所と電車区(工場)が併設されていましたが廃止後も駅舎、車庫、変電所が現存しています。
 


車内の路線図を見てわかる通り3つ学校名がついた駅(三農校前・北里大学前・工業高校前)があるので朝夕は学生さんの利用が多かった路線だったのでしょう。
全線単線電化の十和田観光電鉄線において七百は三沢を出て3つ目の駅で唯一の交換駅。

 


七百鉄道記念館とは
旧七百駅周辺の住民有志により設立された七百レールファンクラブが旧七百駅構内の検修庫内を七百鉄道記念館として車両6両の保存展示活動を行っています。
保存車両は会員が買い取ったものだそうです(すごい!)


私は七百には一度も来たことがないし近くを通ったこともなかったので当日はカーナビに導かれ我が家からクルマで1時間ちょっとのドライブ。
10時開場とのことだったのでこうした鉄道関連のイベントは大勢のファンが押し掛けるイメージがあったので開場の30分ほど前に到着。


これが現在の七百駅の駅舎。
鉄道が営業していた当時も無人駅だったそうです。
住宅地のちょっとした空きスペースに位置しているので線路も踏切もない現在ではカーナビが無ければ果たしてたどり着けたかどうか・・



駐車場の確保も心配でしたスタッフの方に聞いたら駅前の空き地に誘導されましたが肝心の鉄ちゃんの姿が皆無・・・
まぁ移動には鉄道が使えずクルマか路線バスを使うしかないので遠方から来るファンにはちょっと厳しい立地条件なのですがここまで鉄ちゃんらしき人がいないとは驚きです。(青森恐るべし)



メイン会場の電車庫には改札が設置されていました。
すぐ目の前にで凸型電機が横並びという素晴らしい光景。
スタッフの叔父さんたちが開場30分前に詰めかけた(?)我々数名のためにシャッターを開けて開場前に入場させてくれました。
何とも気さくでフレンドリーいかにも青森の田舎のおじさんたちです。



旧電車庫(工場)が七百鉄道記念館になっているようですが開館日は一年に一度の今日春と秋の2回だけで普段は見学不可とのこと
展示車両は電気機関車2両、無蓋貨物車2両、電車2両のようです。



駅舎とは対照的に電車庫はそれほど老朽化が目立つということもなく当面は安泰かも?




#59138;おことわり
私は昨今の鉄道ファンの皆様のような豊富な知識も見識もないので素人レポートになりますので悪しからず。


まずは機関車から順番にご紹介。



凸型電気機関車 ED402 川崎車輛製  1962年製造
”殆ど凸型電機を製造したことのない川崎車輛製”と解説板に書いてありました。
#59128;Wikipediaの解説(こちら



十和田観光電鉄では貨物輸送も行われていましたが1981年に貨物営業は廃止。
その後は除雪や工事用車両として活躍。
三沢で国鉄(JR・青い森鉄道)と接続していたので鉄道網から外れた十和田市にとっては貴重な輸送手段だったのかもしれません。


スタッフのおじいさん(多分OB)に尋ねたら当時は農産物、肥料、木材を運んでいたそうです。
十和田は穀倉地帯で現在でも農業が盛んな土地、十和田湖方面には広大な森林地帯もあるのでトラック輸送が主流になる以前はやはりこの地域の産業にとって重要な役割を果たしたに違いありません。


もう1両の電気機関車


凸型電気機関車 ED301 日立製作所 1951年製造
#59128;Wikipediaの解説(こちら

先ほどのED402投入前の主力機。
昭和26年(1951)に十和田観光電鉄が電化&三沢で接続する国鉄の狭軌に改軌した際に新造した30t級電機。


ED402等の投入後は貨物の予備機となっていたということですがED402と10年ほどの車齢の差しかないのに車体の老朽化が目立っていました。
製造から70年近く経過しているので仕方がないとはいえこうした保存車両のメンテナンスの費用はどう捻出されるのかなぁ?






電気機関車と電車の間には無蓋貨車(トラ)が2両配置されています。



1962年に川崎車輛でトラ301・302の2両が製造されました国鉄のトラ40000型と同型式だそうです。
改軌により三沢で国鉄東北本線と乗り入れが可能になってもしばらくは国鉄線内を走行できる仕様を満たす貨車がなく国鉄側からのみの乗り入れだったものがこの国鉄仕様に準拠したこの貨車の登場でとうてつ側から国鉄線への乗り入れができるようになったそうです。



無蓋貨車は子供のころから数多く眺めていましたがこうして実際に手を触れるのは初めてでした。


電車庫の内部では車両展示のほか鉄道施設で使われていた物品の展示もありました。


腕木式信号機  



色灯式信号機

開館前にご厚意で見学させていただきましたが開館時間の10時が迫り一旦車庫を出ることにします。
その前に駅舎に戻ってホームへと出てみます。


ホーム端より十和田市方向の眺め
線路脇を流れるのは稲生川。十和田市内を流れる灌漑用水(人口の川)で灌漑用水路界では有名な存在。
稲生川の堤防用地の提供を受けたとうてつ線はほぼこの稲生川沿いを走行するルートをとっています。


七百駅の衛星写真(GoogkeEarthより)
沿線唯一の交換駅&電車区といえども駅周辺は長閑な風景です。



三沢寄りからのホーム全景。



駅舎内の待合室の壁に掲げられていた黒板


正式な開場時間になったので再入場して数量限定の硬券入場券をいただきます。
先着300名様限定ということでしたがこの集客状況だと・・・焦って早く来なくてもよかったかも・・

※その後の地元紙の記事によると来場者数は259人だったそうです。




なんと0001番ゲットです#59028;


次回は後編は”電車編”です#59116;#59116;

#59128;七百鉄道記念館一般公開日(後編)







十和田観光電鉄の80年―軽便から釣掛電車まで (RM LIBRARY (51))



  • 作者: 岸 由一郎

  • 出版社/メーカー: ネコ・パブリッシング

  • 発売日: 2003/10/01

  • メディア: 単行本